コーギーのジャックと店長の出会い。

先日、店長の愛犬であるコーギーのジャックが15歳の誕生日を迎えました。

今回は店長とジャックの出会いについて書いてみたいと思います。

私がジャックを迎えた経緯は決して褒められたものではありません。

ジャックに初めて会ったのは、たまたま立ち寄った大手のペットショップでした。

最初に見たその子犬は生後2ヶ月で、次に見たときは、ケージの外のワゴンセールに、他の子犬と一緒にケージに出されていました。

外にいた他の子犬は、生後4ヶ月を越えた子達でした。

コーギーはまだ3ヶ月にもなってもいません。

大体、外に出されるのは生後4ヶ月を過ぎて、ケージが窮屈になった大きな子が多いのに、なんでこんなに小さな月齢でワゴンセールに出されてるんだろう?と思って観察していると、その小さなコーギーは、おそらくアレルギーがあり、下痢をし続け、栄養失調からくる発育不良と、皮膚病をおこしていました。

この子はどうなるんだろうと気になって、(今思えば、自分が何とかしてあげたい!という気持ちにさせるような、まんまとその店の術中にはまっていたことになりますね。)1ヶ月以上、毎日悩んで悩みまくりました。

下痢ばかりで世話がめんどくさいから早くワゴンセールで売ってしまえという感じだったのかなぁと思います。

サークルの中にはマルチーズとチャイニーズクレステッドドッグがいて、この子達はとても元気で、人が来ると撫でてほしくて、こちらに飛び付いてきて、マルとチャイクレは常に一緒に遊んでいました。

かたやコーギーはいつも同じ場所に。

サークルの真ん前で、いつも真っ直ぐ前を向いて、誰かが話しかけても全く反応せずに、とにかくずっと前を見ていました。

コーギーがマルとチャイクレと遊んでいる姿は見たことがなく、ずっとサークルの真ん前でひたすら前を見ていました。

体は弱そうだけど、心は強い。

人が嫌いだったり、心が弱かったら、サークルの前面にはおらず、奥で丸まったり、震えたりしているはず。

弱くはない、でもどこか諦めている。

そんな感じに見えました。

いつの間にか、この子の強い目に牽かれている自分がいました。

気になって、気になって、飼いたい気持ちが抑えきれず、何度も見に行っていたある日のこと。

そこの常連と思われる女性が「ホントこのコーギーいつ見ても愛想ないわよね、撫でても反応しないし、こっちの目も見ないし。誰も飼わないでしょこんな子。」とコーギーに言い放った一言を聞いた瞬間に飼うことを決めました。

あの一言は絶対に忘れません。

あの女性を見返すくらいにいい子に育てる。

おい、お前外に出るぞ。

色んな所に一緒に行こう。

色んな人と色んな犬に会って、色んな景色を一緒に見よう。

いいフードを与えて、キレイにして、しつけをびっちり入れて誰からも愛される犬に育てようと思いました。

子犬を飼ったことをその時、働いていた自分の師匠に報告することに。

心臓が飛び出すんじゃないかというくらいにバクバクしながら、おそるおそる電話をしました。

私「すみません、子犬を飼いました。」

「どこで?」

私「〇〇です。」

「はぁ?

お前本気で言ってんの?

子犬を飼うときは一緒にブリーダーのとこに行って、きちんとした子犬を選んで飼うって言ってたよな?

なに?

可哀想だから、同情で飼ったのか?

お前は助け出して良かったとか思っているかもしれないけど、そうやって飼ってしまうことが、そういう店を助けることになるってなんでわからない?

お前が飼ったことで、ケージが1つ空いて、またすぐに市場(子犬を競り落とすオークション)を通して子犬が入って来る。

生後45日くらいのよちよち歩きで、まだどんな子犬かわからない子を何も知らないほとんどの人が抱っこをして、衝動的に飼っていく。

お前はいいかもな、プロだし知識があるから。

なんとか育てられるかもしれない。

でも、何も知らないで飼って病気を発症したり、しつけをしきれずに手放したお客様や、後悔した人を沢山見てきたよな?

プロとして見本にならなきゃいけないお前がなんでそれをやっちゃうんだよ。

本当にガッカリだ。

もう好きにしろよ。」

怒りを通り越して、失望と呆れが電話口の向こうから痛いほど伝わってきました。

今のペット業界が抱える問題点であり、闇の部分。

誰でも、お金さえ払えば子犬、子猫を簡単に飼えてしまう日本。

結果、こんなに大変だとは思わなかった、大きくならないと言われた、悩み、手放してしまうことも。

それが飼育放棄に繋がり、殺処分へと繋がってしまうこともあるのです。

意識はどんどん変わってきていて、殺処分0を掲げている自治体も出てきています。

私の基礎を作ってくれた上司は独立する前にフランチャイズの店長をやっていて、生体販売もしていました。

独立してからは、子犬を欲しいお客様がいたら店頭に子犬は置かず、一緒にブリーダーの所に行ってアドバイスをしながら子犬を選ぶ方法をとっていました。

私が子犬を飼うときも、きちんとしたブリーダーから飼うのが当然の流れになっていたのですが、私はそれをせずにジャックを迎えてしまったのです。

上司の怒りは当然だと思いましたが、その時の自分はまだ若く、よくわからないまま、意地になっていました。

でも、今なら上司の言っていることが痛いくらいによくわかります。

ジャックを飼い、不安な気持ちでいっぱいでしたが、私もこうと決めたら絶対に曲がらない性格なので、意地でもジャックをいい犬に育てると決意しました。

動物病院に行くと、皮膚はアカラスと言われ、関節は前も後ろもグラグラでした。

絶対に太らせないように、下手すれば手術しなければいけなくなる。と先生に言われ、ある程度は覚悟をしていたものの、さらに不安な気持ちは増しました。

完治まで、半年くらいかかるかもと言われていましたが、1ヶ月くらいでアカラスを押さえ込めました。

アカラスになった理由はペットショップでのストレスと、合わない食事を与えられたことにより、腸の状態がめちゃくちゃで、ジャック本来の抵抗力が無くなっていて、アカラスが発症していたのではないかと思ったからです。

なら、ジャックが元々持っている力を取り戻せばよいのではないか?

ジャックに合うフードを与えればよいと思いました。

下痢をしないフードを経験から予測して与えました。

予想通り、次の日から下痢は止まり、白っぽかった毛色は1ヶ月くらいはかかりましたが、一気に濃い色の、艶がある被毛になっていきました。

毎日食べるフードがどれだけ大事なのかを、ジャックから教わりました。

病院での対症療法ではなく、まずは予防することに意識を置き、ジャックを飼ってからよりフードの勉強をするようになりました。

それらの経験は、後にお客様の愛犬に還元されることになります。

合うフードが見つかったなら、うんちの状態を見ながら、食べたいだけ食べさせる。

このブログでも散々、書いてあるように私は子犬に食事制限はしません。

子犬の成長期を後で取り戻すことは出来ないからです。

お客様とお話しをしていると、フードの袋に記載されている給与量を頑なに守ったり、この量だけ与えればいいと言われたからと、ずっと同じ量を与え続けたり。

子犬の成長に合わせて、少しずつ給与量は増やしていかないといけません。

一気に増やすと消化不良を起こす場合があるので、量は少しずつ増やします。

人もそうですが、同じ体重でも食べる量は違います。

うんちの状態を見て、カチカチのうんちであれば、少ない可能性が、ゆるければ、与えすぎかもしれません。

うんちがゆるくなる原因は、ストレスや疲れ、季節の変わり目などにも起こりがちです。

食べたいならジャックが満足するまで食べればいいと、うんちの状態を見ながらフードを与えまくりました。

ジャックが、子犬が持っている本能を信じる。

フードはみんながあげすぎじゃない?って心配するくらいに食べさせまくりました。

ジャックが走りたいなら、気が済むまで走ればいい。

ジャックが遊びたいなら、友達の犬と遊びまくればいい。

ジャックが噛みたいなら、噛んでもいいおもちゃやガムを噛みまくればいい。

運動量が多いコーギーなのに、狭いサークルに入れられ、子犬なのに出来なかったことを全てジャックにやらせました。

足りなかった分の社会化を取り戻すことに必死でした。

思えば、ジャックを育てる時に合宿の基礎は出来ていたんですね。

それでも、いざ自分でやってみるしつけも実際には本とは全く違い、初めて自分で飼った子犬を育てるのが大変で、育児ノイローゼみたいになりました。

だから、私は合宿にカウンセリングに来るお客様の気持ちがよくわかるのです。

私も最初はこの先どうなるんだろう?と不安がいっぱいだったからです。

とにかくがむしゃらに1歳までに、朝は家の近くのドッグランか多摩川に行き、昼間はお店の看板犬をして、それでも疲れてなければ夜は駒沢のドッグランへ行きました。

とにかく色んな刺激を与えて、色んな所に行き、沢山の人と犬と会わせまくりました。

絶対に失敗はできない!!と強く思っていたのをよく覚えています。

勝手に自分を追い込んでいたのですが、プレッシャーはハンパじゃなかったです。

フードを勧めている店員の愛犬の状態が悪かったら説得力がない。

しつけをアドバイスする店員の愛犬が言うことを聞かなかったら説得力がない。

1歳を過ぎて、やるだけやってジャックは自分にとって最高の犬になりました。

体重はコーギーのスタンダードから大きく外れる8.5キロと小さいですが、気が強く、リーダーシップがあり、その後は私と共に販売する子犬を育てる仕事をしてくれるまでになりました。

ジャックは自分の分身ですし、宝です。

飼ってもちろん後悔はしていませんが、自分が体験してみて、本当に子犬を育てるのは大変なことなのだと実感しました。

ペットショップで、何も勉強せず、何も考えずに小さな子犬を飼うことを私は手放しではお勧めしません。

その後に育て、しつけをするのは全部、その子犬を飼った飼い主だからです。

大人しいですよ。

お散歩はそんなにいりませんよ。

大きくなりませんよ。

しつけの相談や、カウンセリングで、その場かぎりのペットショップのお約束の接客、売りっぱなしのペットショップに怒り、傷付く飼い主をどれだけ見てきたことか。

そういう所で飼った子犬が全員不幸になるわけではないのはわかっています。

でも、子犬をどう飼っていいかわからずに困っている飼い主、誤解されて傷付いている子犬が沢山いるのは事実なのです。

法律が変わらない以上、このような流れは続くでしょう。

飼う側も可愛いだけでなく、犬をもっと勉強すること、販売する側も、子犬を渡すことはそのお客様の人生に関わることなのだという意識を強く持ち、売れればいいやではなく、人と犬が幸せになれるようにお手伝いをしてもらいたいなと思うのです。

時間はかかるかもしれませんが、きっと変わっていくと信じています。

私もジャックが1歳になるまではとにかく不安でした。

自分と同じように不安を抱えながら子犬を育てている人は絶対にいるはず。

だから、色んな方のアドバイスもあって、代表に合宿をやらせて欲しいとお願いし、今があります。

カウンセリング、合宿、社会化お泊りに来る子達みんながジャックの小さな頃と被ります。

最初から出来る子なんてほとんどいません。

カウンセリングに来るお客様も自分と重なることがあります。

最初から犬を飼うのが上手な人の方が少ないと思います。

犬を家族として迎えるとなると、10~14年くらいの寿命と考えると、その方の人生に関わることだと私は思っています。

犬を飼った人にも、飼われた犬も幸せになってもらいたいのです。

本当に犬を飼うってすごいことだと思います。

簡単には飼えないかもしれません。

でも、それらをクリア出来たなら、その先には最高の世界が待っています。

私とジャックがそうであったように。

大変なことも多かったですが、ジャックを家族として迎えて本当に良かったです。

私は、プロである前に愛犬家でありたいと思います。

ジャックと出会った時の気持ち、育てていた時の気持ち、全盛期だった頃、シニア期に突入した現在、全てが大切な思い出であり、経験であり、宝物です。

これからもジャックを通して色んなことを経験すると思います。

これからも、私は悩めるお客様と、犬の味方でありたいと思います。

人と犬が笑顔になれるお手伝いをしていきたいです。