療法食・処方食
療法食(処方食)とは、特定の疾患に対応して原材料や成分が調整されたペットフードのことを言います。病気の際に一時的に与えることが目的とされているため総合栄養食としての基準を満たしていないものもあるので、基準を満たしていない療法食を長期的に与えることはお勧めできません。
食物アレルギー・皮膚疾患
タンパク源
食物アレルギーによる疾患が起こっている場合、原因になっているたんぱく源を与えないことが重要になってきます。原因になりやすい牛肉や鶏肉等を使用せずに、ダック肉や鹿肉、魚肉などの低アレルゲンのタンパク源や、加水分解タンパクを使用してアレルギー反応を起こらないように調整された療法食が多くあります。
必須脂肪酸
皮膚の健康を維持するのに、必須脂肪酸は重要な役割を果たします。必須脂肪酸には、オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸がありますが、量とバランスが適切でないと皮膚の健康に問題が生じますので、増量やバランスを調整したものがあります。
ストルバイド尿石症
タンパク質
必要量を上回るたんぱく質を摂取した場合には、アミノ酸から転化した尿素の尿中排泄を増加させ、それがストルバイド尿石の形成を促進するため、たんぱく質の量は制限されています。
リン
ストルバイド尿石の構成成分であるリンを過剰に摂取しないように配慮されています。
マグネシウム
ストルバイド尿石の構成成分であるマグネシウムを過剰に摂取しないように配慮されています。
尿のpH値を調整
ストルバイト尿石が形成されにくい尿(酸性尿)になるように、栄養のバランスを調整しているものがあります。
シュウ酸カルシウム尿石症
ナトリウム
ナトリウムの過剰摂取がシュウ酸カルシウム尿石症の原因のひとつであるとされているため、ナトリウムを過剰に摂取しないように配慮されています。
カルシウム
シュウ酸カルシウム尿石の構成成分であるカルシウムを過剰に摂取しないように配慮されています。
マグネシウム
マグネシウムと尿中カルシウム濃度には相関があることが研究結果から示唆されており、マグネシウムも制限されている場合が多くあります。
肝疾患
タンパク質・脂肪
消化吸収率の高いタンパク源を使用したたんぱく質を摂取することが望ましいとされています。
繊維質
食物繊維が増量されたフードは、肝疾患に有効とされています。
銅
肝臓への負担を減らすために、銅の摂取量を必要最低限に抑えています。
亜鉛
肝臓への負担を減らすために、銅の吸収を抑える効果がある亜鉛が増量されている場合があります。
腎疾患
腎疾患の場合には、常に新鮮な水を摂取できるようにしておくことがとても重要です。
タンパク質
腎臓への負担を考慮したんぱく質率は15%以下に制限されているものが大半を占めます。近年の研究結果からたんぱく質の割合よりも質が重要だと考えられているため、大半のフードには消化吸収率の高いタンパク源が使用されています。
リン
リンの過剰摂取は腎臓に悪影響を及ぼすため、重度の場合には0.15~0.3%に制限されることが推奨されています。重度の腎疾患においてリンを制限すると生存率が改善された研究結果があります。
ナトリウム
ナトリウムの過剰摂取は高血圧を誘発するため、重度の場合には0.25%以下に制限されることが推奨されています。
カリウム
腎不全により腎臓の機能低下が起こると、カリウムの排出がうまく行われなくなり、多量のカリウムを摂取した場合には高カリウム血症になる恐れがあります。
長期間与えることの問題点
たんぱく質が大きく制限されており、AAFCOの成犬に必要な最低タンパク質率である18%(2013年現在)を下回っているものは長期間与えることでのタンパク質不足が問題になる場合があります。特にシニア犬はたん白質の欠乏によって筋肉が衰えやすいため、注意を要します。