今回、合宿に来てくれたのは、生後11か月、もうすぐ1歳になる柴犬の女の子のはっぱちゃん。
最初、カウンセリングの話しがきた時、正直言ってやりたくないと思いました。
このブログで何度も書いていますが、社会化は、子犬のうちの生後6か月までが非常に大切です。
噛む力が強い犬種の柴犬で、ほぼ成犬。
とてもリスキーです。
噛まれれば私もタダでは済みません。
はっぱちゃんは、合宿組の白柴のココちゃんのお父さん、お母さんから紹介を受けました。
てんちょー、はっぱちゃんをよろしくね!!
ココちゃんの頼みなら断れないなー.
可愛いなぁ、ココちゃん笑
というわけで、カウンセリングをすることに。
初めまして。
お客様は、超が付くくらいに優しい飼い主様でした。
困っていることは、お散歩に行くときに胴輪を付けようとすると嫌がり、なかなかつけさせず、しまいには噛むということでした。
胴輪をつけるまでに時には30分もの時間がかかり、ひどい時には血まみれになることも。
お散歩に行くまで30分!?
すごいですね・・
顔回り、首回りを触られるのを嫌う柴犬は少なくありません。
はっぱちゃんは、とても明るく、今の段階では緊張が特別強いとも感じませんでした。
試しに首輪にリードをつけてみることに。
リードを首輪に着けようとした瞬間、普通に何の躊躇もなく噛みついてきました。
唸りなどの予備動作なしか・・
危ないなー
これはちょっとマズイですね・・
ていうか、お客様がよくお散歩に行けてるなというくらいのレベルです・・
血が出るのは当たり前なくらいに危険な噛みつき方です。
柴犬は、顔回り、首などを触られるのを嫌う子が多いです。
最初は、嫌だ!という意思表示でガウッ!とやられ、飼い主がびっくりしたり、怖がってしまって、次から人が大丈夫かな?噛まないかな?とドキドキしながらつけようとします。
人の緊張を犬は拾います。
そして、また柴犬が緊張に耐えられなかったりして、また嫌がって、ガウッとする。
それが何度も繰り返され、ガウるのが強化されていくパターンが多いように思います。
私は緊張はしないので、いけるでしょ。と何気なくつけようとしたら、あっさりと噛まれそうになりました。
本気で噛むという行為を最初から好んでやる犬はほとんどいません。
噛み犬と呼ばれる犬でも、噛む前に唸ったり、体を固くして、表情がこわばり、それでも相手が引かなければ追い込まれて、最終手段の実力行使として噛みつきに移行することが多いです。
もちろん、元々ケンカっ早い子や犬種もいます。
しかし、はっぱちゃんはその唸りだったり、噛む前兆の動きがありませんでした。
噛むことは、はっぱちゃんにとっては当たり前の行動であり、追い込まれたりしなくても嫌であれば躊躇なく噛む。
逆に、犬相手には何も出来ないことを確認しました。
社会化不足と、基本的なルールがわかっていない状態で成長してしまったようです。
合宿決定。
最初は、自分よりも小さな相手にも何も出来ず。
でも、犬相手に噛みつかないということは、何でもかんでも噛みつくわけではないということです。
ほぼ成犬なので、子犬とは違って大きな変化は望めないため、他の犬と遊べるようになって欲しいとは思いません。
最低限、合宿のお泊まりを通して、群れの中で生活することで、犬同士の関わりから少しでも犬を理解してもらえたらいいなと思いました。
犬には遠慮した態度ですが、人には躊躇なく噛みます。
それをどうにかしないといけません。
どちらにしろ、今は私でも触れません。
少し様子を見ます。
時間が経ち、落ち着いてからやっと首輪にリードを付けることができました。
最初は、リードに前足をかけ、リード噛みまくり、柴犬ではお馴染みの絶叫もありつつ。
でも、それは予想通りだったので、ちょちょいのちょい。とリードワークをして、すぐに歩けるようになりました。
お散歩に行くとこの笑顔。
元は悪い子ではないんですよね。
いつも私が、お預かりした犬を見て思うのは、噛むから悪い犬。ではなく、なぜその子が噛むのか?を見て、とにかく考えます。
はっぱちゃんが顔回り、首回りを噛むのは触られるのが嫌だからです。
でも、毎回、血が出るほど噛んではお客様がまともにお散歩に行けません。
どのレベルでスイッチが入るのかを確かめることに。
顔回り、首回りは触れないのはわかっているので、体の他の部位がどれくらいの反応があるのかを確認します。
首周りを触る練習をしている時に、首輪を持ってすぐに空気が変わりました。
始まりますねー。
はっぱ「手を離さないと噛む。」
店長「うん、わかってる。でも離さない。だって離したら噛むでしょ笑?」
はっぱ「離せって言ってんだろ!!」
きましたー。
神犬様、間違った噛み犬様降臨。
ひいいいい、おっかねえ!!
これは噛まれたらマジでヤバいですね。
こんな勢いでお客様が噛まれたら、何にもできません・・
しかし、この数時間後にバックリとはっぱちゃんに噛まれました。
店長も数分間、悶絶するくらいの痛さ・・
でも、噛まれて初めてわかることもあります。
どのくらい本気なのか?
噛んだ後にその子がどういう表情をしているのか?
やっちまったという感じか?それとも言うこと聞かないなら何度でも噛んでやるぞ!!という感じなのか?
カウンセリングの時は、普通の柴犬と違って、はっぱちゃんは、ものすごい緊張をまとっていたわけでは無かったのです。
元は良い子。
ただ、噛めばどうにかなるという学習をしてしまった。
はっぱちゃんは私を噛んだ後、ざまあみやがれ。また来てみろ。何度でも噛んでやるからな。という表情でした。
今はそのタイミングではありませんが、はっぱちゃんを「叱る」ことはここで決まりました。
それでも、叱らなくても柴犬には柴犬の触り方があります。
最初は短いタッチで軽く。
ずーっとしつこく撫でると嫌がる柴犬は多いです。
柴犬は愛玩犬ではありません。
翌日には触れるようになりました。
そうそう、力を抜いてー
いきなり抑え込んでも、抵抗するに決まっています。
こちらが感情的になってはいけないのです。
人が緊張するから犬も緊張するし、人がてめえ、この野郎!!と思ったら、犬もなんだこの野郎!!となります。
犬をわかっているプロはそのまま押し切れる場合がありますが、一般の方はやらないでください。
余計に悪化することがほとんどか、下手すると犬が壊れます。
体も心も。
私は、子犬のリーダーにはなろうと思っていません。
その子の「理解者」になりたいなと思っています。
その子犬が何を考え、お客様とこれから先、どうやったら上手く生活出来るか?
はっぱちゃんには基本的なルールが欠けていました。
噛んではいけない。とわかっていないなら教えてあげればいいのです。
普通の状態では噛まなくなりましたが、ストレスや負荷がかかるとまだ噛むはっぱちゃん。
ここぞという「叱る」時を待ちました。
下手に真似をされると困るので、詳しくは書きませんが、結果的には叱りによって、はっぱちゃんは嚙まなくなりました。
もちろん、叱りっぱなしでありません。
UGは叱りだけでなく、開放もセットにしています。
そうでないと犬の心の行き場がなくなりますので。
もう大丈夫かな?というところでお客様にご連絡しました。
店長「お話ししていた通り、はっぱちゃんをきっちり叱りました。おそらく、もう噛まないと思います。」
お客様「本当ですか!?普通に触れるんですか?」
店長「はい。触れると思います。実際に触ってみてください。」とお客様に来てもらうことに。
お客様がご来店。
お客様「噛まなくなったというのは本当なんですか?本当に触れるんですか?」
店長「もう、初日のはっぱちゃんとは違いますので。噛んでいた顔回りを触ってみてください。」
恐る恐る、顔や口周りを触るお客様。
お客様「噛まない・・・信じられない・・店長!!噛まないですよ!!」
はい、知ってます笑
お客様「なんかもう全然、目とか雰囲気が全く違うんですけど。これ、本当にはっぱですか笑!?」
お客様は今まで、時には30分もの時間がかかり、なおかつ噛まれまくっていたハーネスの着け方を細かく説明しました。
もちろん、噛まれることなくあっさりと着けられました。
お父さん「なんだよー、すごいなはっぱ!!」
今までは触らせてくれなかった顔も触れます。
お客様「普通に触れる。信じられない。」とお客様から何度、信じられないという言葉を聞いたでしょうか。
お父さん、本当に嬉しそうでした。
まだこれで終わりではありません。
あともう少し頑張ろうね!!
えへへー、撫で撫でされて嬉しい。
そして、お迎えの日。
満面の笑顔のお客様とはっぱちゃん。
みんなー、見て!!
いくよー!!
テンションMAXのはっぱちゃん。
見よ、この芸術的なリードさばきをっ!!
はっぱちゃんの舞いは続きます笑
迫真の演技。
リードぴーんっ!!
ばっちり決めポーズが決まりましたっ!!
10点満点ですっ笑!!
表情がもう全く違いますよね。
ピリピリしたはっぱちゃんはそこにはいません。
これです。
こののんびりした平和な時間。
柴犬との暮らしで思い描いていた穏やかな空間。
合宿後も、はっぱちゃんは元に戻ることなく、お客様と楽しく暮らしています。
お買い物に来る度に、てんちょー♪とカウンター内に入ってきて、群れのみんなを見て、ふーん。今日はこんな感じか。と確認したら、またお父さんとお母さんの元に戻ります笑
ほのぼの♪
もちろん、毎回こんなに上手くはいきません。
成功した理由があります。
お客様がはっぱちゃんに噛まれまくっていたにも関わらず、全くはっぱちゃんを悪い子と疑わなかったこと、正直、店長からすると意味不明なくらいに明るく、優しかったこと。
お父さん、お母さんメンタル強すぎ最高です。
中途半端な支配や、否定をしないで育てたこと。
この「中途半端」がかなり犬をダメにしてしまっています。
本当にプロも一般の飼い主様も気を付けなければいけません。
通常であれば、焦ったり、こいつヤバいんじゃないか?このままいったら問題犬になるんじゃないか?と噛まれるようになってから慌てて抑えつけるようなしつけをし始め、愛犬との戦いが始まり、関係が悪化していく・・というのがほとんどの流れなのです。
はっぱちゃんは噛みつきましたが、それがいけないということを教えてもらっていないだけでした。
そして、店長との出会いで噛むのはいけないことだと初めて知ったということですね。
普通、噛むようになったほぼ成犬の柴犬がたった1週間では変わりません。
はっぱちゃんの場合は、いろんなケースが奇跡的に重なった、非常に稀なケースと言えるでしょう。
噛まなくなったはっぱちゃん。
普通に触れるようになる。
この嬉しさは、噛みつく愛犬を飼っている方にしかわからないと思います。
別の犬なんじゃないかというくらいの変わりよう。
以前は着ける瞬間にバクンと血が出るまで噛みついてきた首輪も、
ピリピリすることなく、
すんなり着けれます。
お父さんもお母さんも大喜び。
わしゃわしゃ触ってもー
手で顔を挟んでも大丈夫!!
合宿にあたり、今回もみんなの協力がありました。
真ん中のホロくんは、はっぱちゃんに惚れて熱烈アプローチしましたが、恋は実らず笑
それでも、はっぱちゃんは満更でもなさそうでした。
チーム柴犬合宿組。
ホロくん、奈々ちゃん、はるくん、はっぱちゃん、ココちゃん。
みんな、最初はお父さん、お母さんを悩ませ、泣かせ、追い詰めた子たちです。(あ、はっぱちゃんは例外かも笑)
お客様に噛み付きまくったホロくんは、今は週末は家族でキャンプを楽しんでいるそうです。
奈々ちゃんは、今はハイパーだけど、優しい子になりました。
はるくんは、優しいお母さんに連れられて、色んなところに行っています。
ココちゃんも最初はお母さんも滅多噛みされて、最初は泣いてばかりだったそうですが、今は楽しい毎日を過ごしています。
柴犬の子犬は強烈な子が多いですが、きちんと育てれば、ほとんどの子は笑顔になります。
あ、忘れてました。
合宿が成功した要因の一つに、はっぱちゃんは子犬の頃から、カフェなどに一緒に行き、社会化はある程度出来ていたのです。
本当に噛みつきだけだったという珍しいケースです。
これからも、優しいお父さんとお母さんと一緒に楽しく暮らしてね。
お父さんとお母さんの「合宿に来るまで、1週間に1箱、絆創膏を消費してて、テーブルの上には常に絆創膏が置いてありました。合宿が終わってから絆創膏を全く使わなくなったのが嬉しいです♪」という言葉が印象的でした。
1週間に1箱ってすごいですよね…
本当に合宿が成功して良かったです。
大切なはっぱちゃんをお預けいただき、ありがとうございました。
はっぱちゃん、これからも笑顔でねー!!
柴犬の昔と今はかなり違います。
その頃の犬の飼い方は、外飼いがほとんどだったと思います。
飼い始めの子犬の時は部屋や、玄関で育て、ある程度大きくなったら外に出す、あるいは最初から外で飼われていることがほとんどだったと思います。
人は家の中、犬は外という区別がきっちりとされていた時代。
やがて犬は成長し、大きくなり、力も強くなり、警戒心も強いなり、成犬になれば、番犬となり、家族以外の怪しい人間が家に近寄ってきたら吠えて、それでも近寄れば噛みつくこともあったと思います。
かたや現在。
もちろん、外で飼われる柴犬もいると思いますが、家の中で飼われることが普通の時代になってきました。
犬は外飼いの番犬。から、犬は家族。の時代になってきました。
一昔では考えられないくらいに柴犬との距離が近くなりました。
昔は甘噛みをする頃には、もうここまで元気なら外で大丈夫だろ。歯が痒そうだから肉屋から牛骨もらって噛ませとくか。と外に出されて、それでも噛んだら時には昔気質のげんこつ親父に殴られていたかもしれません。
外にいれば基本的にずっと1頭です。
孤独です。
人が外に出てくれば、構って欲しいと一生懸命にしっぽを振って、ぶん殴る主人でも甘えていたかもしれません。
今は、とにかく「可愛い」が優先されてきていて、甘噛みをし始めてから、慌ててネットや本で調べ、そこからなめられてはいけないとか、リーダーにならなければいけないとか、家族の愛犬の見方はガラッと変わり、いきなりきつく子犬に当たるようになったり。
このブログで何度も書いていますが、子犬は本来であれば親兄弟と一緒に暮らし、兄弟とプロレスごっこをして、噛んで噛まれて、やりすぎたら時には親犬にきゃんきゃん泣くくらいに噛まれて叱られて、様々なルールを覚えるわけです。
それが、早くから親兄弟から離され、ペットショップのケージでは独りぼっち、新しいお家にいったと思ったらワクチンの関係で外に出るのはかなり遅くなり、理想は生後6ヶ月までに終わらせておきたい社会化は当然のように遅れ、間に合わず、でもパワーは有り余って、刺激が欲しくて、兄弟はいないので、人や家具しかないからそれを噛んだら、叱られる。
子犬の心の行き場はどこへいったらいいのですか?
ハッキリ言って、今の日本の流れでは、どの子犬でも問題犬と言われるレベルに育つ可能性はあるのです。
同じ兄弟、同じ犬種でも個体差があり、特に、兄弟の中や、その犬種の中でもとびきり強い子犬たちが問題犬と言われやすいです。
そういう子達がUGにどんどん集まってきます。
みんな強いだけ、パワフルなだけです。
問題犬ではないんですね。
人もそうですよね?
色んな性格の人がいます。
大人しいからいい子犬、大人しいから良い子犬なんて言うのは、人間の勝手な判断にしか過ぎません。
私もこの業界に入って、それなりの経験があり、自分のやり方があります。
合宿、社会化お泊りである程度の実績を出しています。
ぶっちゃけ、犬を飼った方が笑顔になってくれたら、私は色んなやり方があっていいと思うのです。
人間の子供の育て方でも無数にありますから。
みんなが幸せになれますように。
私もこれからガンガン燃えていきます。
やっぱり犬が好きだから。
お客様と犬の笑顔が見たいから。
これからもよろしくお願い致しますm(_ _)m