犬が本来持っている可能性を引き出し、その子の力を開放せよ。

今回、合宿に来てくれたのは1歳になったばかりのカニンヘンダックスのココアちゃん。

今まで合宿に来た子達と同じように、お客様が3頭飼っている中のココアちゃんだけ『吠える』ことに飼主様が悩まれていたのを、当店のお客様がUGペットで合宿があることを紹介してくださり、飼主様のお盆の帰省に合わせて合宿の依頼を頂きました。

当店での合宿は基本は子犬を対象としており、生後4~6ヶ月の、まだそんなにクセのない子犬を3泊4日という短期間で一気にUG色に染め上げ、その後も問題やわからないことがあったら何度でもお店に通ってもらい、みんなと遊び、犬同士のルールを再認識して結果的に1歳くらいで仕上がればいいなという感じで考えています。

ココアちゃんは1歳を過ぎており、なんらかのクセが付いていた場合には、まずはそれらを紐解いていかなければいけないので、1週間といつもの合宿よりも長い時間を頂きました。

そして、合宿がスタートしました。

予想通り、お店に来たココアちゃんは人や犬に対して吠えまくりました。

お家では、他に2頭のダックスの仲間と暮らしているとのことだったので、吠えはしますが、相手が攻撃的でなければ数日で『群れ』に慣れるのではないかと予想しました。

予想外だったのは、散歩のときに、『何も刺激が無い』状態でずっと吠えながら歩くことでした。

今までに合宿に来た子達は社会化が出来ておらず、その子によって人であったり、他の犬や、物音などを怖がったり、パニックになってしまうケースがほとんどでした。

それらは、私がリラックスして一緒に付き合い、直接目の前で見て、一つずつ理解すれば子犬なので受け入れるのも早く、毎回なんとか3泊4日で改善できていました。

しかし、ココアちゃんの場合はもうすでに成犬で、散歩中ずっと吠えるクセがついてしまっているのです。

お店の中では、相手によって好き嫌いはあるものの、思ったよりもすぐに『群れ』に馴染めそうでした。

しかし、散歩だけは何度行っても吠えまくりで、私が理解させよう、落ち着かせようとしてもこちらの声は全く届かず、特に犬に会ったときの吠え方がすさまじく、これといった解決策、糸口が見つからないまま、あっという間に2日間が終わってしまいました・・・。

今までの子達と同じやり方では、このままなにも変わらずに最終日を迎えてもおかしくは無くなってきました。

何が間違っているのか?

今までのやり方が上手くいかないのはなぜなのか?をひたすら考えました。

考え抜いた結果、アプローチを変えることにしました。

そして、3日目についにココアちゃんに変化が現れたのです。

最初の2日間は、今までの合宿の子達と同じように、散歩で吠えるのは社会化が足りず、犬に慣れていないために、『怖がって』吠えていると思い込んでいました。

怖がって吠えている場合に、きつく叱ったりするのは余計に恐怖を助長する場合があり、逆効果になることがあるので、時間をかけて慣らそうと、あえて注意はしていませんでした。

しかし、ココアちゃんのお店の中での他の犬に対するボディランゲージをよくよく思い出すと、決して怖がっている反応では無いことに気が付きました。

お家で多頭飼いをしているので、むしろダックスにしてはボディランゲージは上手な方でした。

お店に、お客様や、犬が来るとどうしても瞬間的に反応して吠えてしまいますが、実際に会わせると、すぐに理解し、お店の中での吠える時間は短くなっていきました。

そして、散歩での『吠え』を解明するキーポイントは、やはり『刺激』が足りていなかったことと、『ダックスという犬種の特性』をいま一度考え直すことでした。

ドイツ原産のダックスフンドは短く改良された足を持ち、猟犬として低い体高を生かし、穴に入って穴熊にひるむことなく吠えて、穴熊のいる位置を飼主に教えるという仕事をしていました。

小型犬ですが、体力はかなりあり、吠える、地面を掘るのが得意な犬種です。

これらの特性を現代の家庭犬に当てはめると、すぐに吠えることは『ムダ吠え』と言われやすく、有り余る体力を発散すれば、『イタズラが多い犬種』となりえます。

ココアちゃんは、視点を変えれば、気が強く、勇気があるダックスらしいダックスだということです。

お家にいる他の2頭が大人しいことで、ココアちゃんの性質は余計に特異なものとしてとらえられ、問題行動と認識されてしまったのかもしれません。

ですが、本当にココアちゃんが問題犬であれば、他の犬に襲い掛かったり、人を噛んでもおかしくないはずです。

でも、ココアちゃんは自信があり、強いのでむやみに攻撃的になることはありません。

では、なぜ散歩の時に吠えるのか?

子犬の頃からおてんばだったココアちゃんは、割合と小さな頃から他の犬に対して吠えるのは早かったようです。

それらはだんだんとエスカレートしていき、飼主様だけではなかなか対処が難しくなっていきました。

それらを解決するにはどうしたらよいのか?

子犬の時に出来なかった経験をさせてあげることです。

ダックスの本能を満たせるように、擬似的にでもココアちゃんに仕事を与えることです。

思いっきり犬同士で遊ばせる。

犬同士で走りまくる。

楽しく一緒に散歩に行く。

とにかく、この子の持っているパワーを満足するまで発散させ、開放してあげること。

ココアちゃんが来たのは、お盆の時期のど真ん中。

お店には、ポメの小次郎を始めとするUGファミリーが、ペットホテルには、UGペットの卒業した子、以前に合宿に来てくれた子、そして常連のお客様の信頼できる犬達が入れ替わりで、お店に来てくれています。

『刺激』を与えまくり、ココアちゃんにとにかく色んな犬と会わせること、その中には気が合う子、合わない子、様々です。

気が合う子とは、遠慮なくたくさん遊べばいいし、気が合わない子がいても同じ空間にいる以上、少しの我慢も覚えてもらわなければいけません。

3日目から、ココアちゃんは一気に変わり始めるのです。

《続く》