自分のしっぽを噛みちぎった豆柴の子犬。

昨年の桜が咲いた頃、知り合いのトレーナーさんから柴犬の子犬お願いしていいかな?と連絡がありました。

カウンセリングに来たのは柴犬の男の子のわさびくん、生後5か月。

小さな小さな柴犬の子犬は、お客様のお家に来た時から噛み癖がひどく、構わないと尻尾を追うだけでなく尻尾を噛んでくるくる回っていたそうです。

だんだんと噛む力も強くなってお客様の生傷も増えてきて、でも尻尾を追うのをやめないので、ある日病院で相談したところ、お薬を処方されたそうです。

でもお客様はなんとなく抵抗があり、与えることはしませんでした。

そしてある日、お客様が仕事から帰宅すると、またケージの中でわさびくんが尻尾に噛み付きながらくるくる回っていたそうです。

その直後、大絶叫してケージから出てきたわさびくんは血まみれでお客様に飛びついて来ました。

よく見ると小さな尻尾のかけら?が落ちていて、尻尾を噛みちぎってしまったことに気が付いたそうです。

なかなか血も止まらず、痛みからかおしっことうんちを出しながら叫び回るわさびくんを病院に連れて行き、入院が決まりました。

退院してからは、傷が治るまでエリザベスカラーの日々。

そうしているうちに、ストレスからか、カラーを外すとさらに凶暴化するようになったわさびくん。

触れることも構うことも出来ず次第にお客様も噛まれることはもちろん、触ることが怖くなってきてしまい、カラーのつけ外しすら困難になっていきました。

そこで、トレーナーさんを自宅に呼び、カウンセリングをしてもらうことに。

実際に、自宅でのわさびくんの様子を見てもらい、カウンセリングしてもらった結果、トレーナーさんの両手が血まみれになり、手に負えない状況に…

その時の絶叫もひどく、3軒隣まで聞こえてるくらいだったそうです。

そして、トレーナーさんから柴犬大好き高橋に白羽の矢がたち、預かることになったのです。

来店され、追い込まれて涙するお客様。

確かにこの絶叫をお家でやられたらかなりキツいものはありますね。

それでも、私はいつものように言いました。

「やることをやってダメなら仕方ないと思いますが、まだわさびくんには何もしていません。チャンスも何も与えられていない。刺激も与えていないし、パワーの発散もしていない。ルールも教えていない。それで問題犬とか脳がおかしいとか言われるのは納得いきません。私にやらせてください。」とお願いしました。

豆柴は小さいから飼いやすいのではないか。

お客様もまさかここまでだとは思っていなかったと思います。

でも、小さくても柴犬は柴犬なので。

お客様の涙を嬉し涙に変えたい。

今は信じられないかもしれないけれど、柴犬の良さを実感してもらいたいと思いました。

預かったのは、昨年の桜の咲く時期。

中目黒は人で溢れかえり、一年を通して来店されるお客様がかなり増える時期です。

その中で、群れに入れたわさびくんは、軽く犬と触れたり、ぶつかったりするだけでパニックを起こし、骨が折れたのではないかくらいの大絶叫。

さすがに我々スタッフもどこか痛いのか?どこか悪いのかな?と初日は全身をくまなくチェックしましたが問題は無し。

外は桜が咲いて華々しいのに、

店内では一日中わさびくんが大絶叫。

トレーナーさんがうちを紹介するのもわかりました。

この絶叫は、普通の家などでトレーニングするのはかなり厳しいです。

虐待しているのではないか?と勘違いしてしまうくらいの叫び声でしたから。

UGは絶叫する子はたくさん来ますし、両隣も上もテナントさんが入っているので、通常のお家と違い、絶叫してもさほど問題はありません。

それでも、次から次へとUGにはお客様が入ってきます。

そこで聞こえるのはわさびくんの大絶叫。

桜の時期は初めて来るお客様も多いです。

ドン引きして帰るお客様。

え?鳴いてるよ、ケガしてるんじゃないの?なぜこの店員は見ているだけ、眺めているだけで助けてあげないの??と不思議そうに、時には酷いやつだ。という表情を私に投げかけるお客様もいましたね。

でも、ここで逃げたらその先は無いのです。

今やらないと、本当にお客様がわさびくんを飼えなくなる可能性が出てくる。

結局、わさびくんの絶叫は3日間続きました。

すごく長く感じました。

柴犬は敏感で繊細な子が多いです。

顔を触れない、首輪にリードを付けられない、ハーネスをつけられない、お散歩終わりに足を拭こうとすると噛みついてくるなど。

それらを叱らずに褒めたり、おやつでなだめてそのまま上手くいけばいいですが、UGに来る場合は子犬が成長して、生後6か月以降にそれらが急に上手くいかなくなってカウンセリングに来るパターンが多いです。

時には我慢は必要だと思います。

我慢させたほうが、その子にはわかりやすく、楽になることもあります。

最初はきついことばかりで、多すぎる刺激に耐えられずに叫びまくっていたわさびくん。

少しずつ、少しずつUGと群れに慣れていきました。

最初はポンと当たっただけで泣き叫んでいた男の子は、

少しずつ遊び方を覚え、

冷静に周りが見れるようになり、

挨拶が出来るようになりました。

フレンチブルドッグのバロンはこういう時に絶対に子犬に圧はかけません。

目を合わさず、子犬が納得するまで匂いを嗅がせてくれます。

バロン、いつもありがとう。

そして、徐々に遊べるようになっていきました。

噛みたいなら、噛むものを与えればいいのです。

人を、自分の尻尾を噛まずに骨を噛みなさい。

豆柴は小さいからお散歩は少なくていいとかいうのをカウンセリングなどで聞くのですが、柴犬の子犬の問題行動と呼ばれる原因が刺激不足、パワーの発散不足によるものがいかに多いか、日々痛感します。

そして、いつのまにか負のスパイラルに突入し、触れなくなるケースも。

次第にほぐれてくる心と体。

増えてくる笑顔。

この子には乗り越える力がありました。

信じてよかった。

すっかり群れの一員になり、

表情には余裕が。

社会化お泊まり組のさんたが来てくれました♪

おめー誰なんだよ!!と激しく反応するわさびくん。

うん、君の先輩だよ笑

仕掛けられてもさんたは反応せず。

なぜなら、わさびくんのこの姿は子犬の頃の自分と同じだとさんたはわかっているから。

気持ちがわかるからです。

さんたも最初はまともに触らせてくれませんでした。

周りに飛び掛かりまくっていましたが、たくさんの経験を積んで後輩の相手が出来るようになりました。

脱力は・・・

上手く出来ない・・笑

社会化お泊りが終わった後も、定期的に通ってもらいました。

生後6か月の反抗期や、去勢手術の後に荒れたり、お客様の緊張が高まって、わさびくんがそれを拾ってしまった時は、何度もUGに来てもらいリセットしました。

店長とわさびは関係性が出来ているので、大丈夫だ。落ち着け。とお泊まりの度にリセットし、お客様にはとにかく疑わずに刺激を与えて、パワーの発散をし続けてください。とお願いしました。

結局、薬は一度も与えずにすみました。

不安がるお客様には、とりあえず1歳まで頑張りましょう、悩んだらすぐに連れてきてください。と励ましました。

そして、先日の久しぶりのお泊り。

そこには、絶叫していたパニックを起こしていた子犬の面影などない、立派に成長したわさびくんの姿がありました。

この目、表情。

写真を撮りながらうるうるしました。

感動しました。

まさかここまでになるとは。

素晴らしいです。

もちろん、お客様の頑張りがあってこそです。

本当にありがとうございました。

大好きなパパに抱っこされるわさび。

本当によく頑張ったねぇ。

良かった。

これからはパパとママと楽しく穏やかに暮らしてね。

 

最近、また柴犬のカウンセリングが増えてきました。

悩んでいるのであればまずはご連絡ください。

6か月未満であればほとんどの柴犬はどうにかなります。

わさびくんがUGに来なかったらどうなっていたか?

そして、わさびくんと同じような想いをしている飼い主様と、子犬がたくさんいると思うと胸が痛くなります。

成犬の柴犬をひっくり返すのはかなり大変です。

是非、子犬の頃に相談をお願いします。

柴犬は愛玩犬ではありません。

従来のやり方は逆効果になることもあります。

オオカミにDNAが一番近い犬と言われることもあるくらいに野性的な犬でもあります。

それが、距離が近すぎたり、溺愛しすぎたり、愛玩犬と同じような感覚で接しておかしくなった子犬を問題犬と言われることに私は納得がいきません。

柴犬は直らないと言われたり、幼稚園で白い目で見られたりした子犬でもUGではほとんどの場合は受け入れます。

柴犬、好きなんです。

不器用だけど良いやつが多いのです。

でも、流行ってほしくないし、簡単に飼えるという風にもならないでもらいたい。

これからも飼い主様と子犬が幸せになれるお手伝いをしていきたいと思います。