ブリーダーとパピーミル、繁殖屋の違い。

前回の記事を受けて、お客様や知人からはまさかのジャックラッセルテリア!!とか、そこいったか!?と大きな反響がありました。

コーギーのジャック、フレンチブルドッグのボルドーが亡くなり、なぜ店長はジャックラッセルテリアの子犬を選んだのか?をより詳しく、細かく書いていきたいと思います。

ボルドーが亡くなった直後は、私も知らぬ間に溜まっていた疲れからか、気が付いたら1か月経っていました。

正直、ボルドーが亡くなった直後は寂しい気持ち、悲しい気持ちはもちろんありましたが、もうボルドーは充分頑張ったし、もう苦しまなくていいんだ。大好きなジャックの元に送り届けられた。とほっとした気持ちもあり、17年ぶりの犬がいない、全て自分のペースで生活することが新鮮で、お散歩で朝早く起きる必要も無いし、留守番も気を使わなくていいし、これはこれで楽しいな。と思っていました。

しかし、1か月も経つと疲れが取れ、冷静になってすぐに思ったのは、やはりまた犬と暮らしたい。ということでした。

次に犬を飼うとなった時にまず思ったのは、UGにいるトイプードルのジーニーでした。

子犬を売る気無しの店長の元、群れで育ち、現在ではポメラニアンのなっぱに続き実質、UGの群れのリーダー的存在で、店長が好きな気が強い男の子。

まだまだハイパーですが、我々スタッフが育てた息子の様な存在です。

ジーニーはもう1歳を過ぎていて、性格も固まっていますから私にとっては飼いやすいなと。

それでも、私がトイプードル??という気持ちが正直あったのと、UGのお客様でジーニーを飼いたいという方が何組かいらっしゃり、もうすでにトライアルに行く予定が一件ありました。(その後のトライアルでお客様の事情もあり、戻ってきたジーニーはしばらく卒業させる予定はありません笑)

もちろん、コーギーやフレンチブルドッグが好きだったので、気が付くとネットでブリーダー情報を見ている自分がいました。

しかし、コーギーの遺伝病であるDMやフレンチブルドッグの体質などを考えると、よし!!またコーギーを飼おう!!フレブルを飼おう!!とはどうしてもならない自分もいました。

そんな中、前から見市さんのジャックラッセルテリアかボーダーテリアをいつか飼いたいと話をしていたのを覚えてくれていた先輩が見市さんに、高橋くんが子犬を探しているのですが、どうでしょうか?とお話ししてくださったのです。

過去のブログでも書いていますが、コーギーのジャックは大手のペットショップでフードのアレルギーから下痢しまくりで発育不良を起こしていた子で、フレンチブルドッグのボルドーは、その当時のお客様がブリーダーにお願いして交配、繁殖したものの、ブリーダーと揉めて、色々あった結果、私の家にきました。

私の師匠は、この業界でやっていくなら、お客様のお手本として、お前が子犬を飼う時は必ずブリーダーの所に一緒に行って健全な子犬を飼おう。と言われていたのに、コーギーのジャックを大手ペットショップで飼ってしまったと決めた時の落胆と怒りと呆れは今でもありありと思い出すことが出来ます。

その時の私は、犬はみんな同じでしょ?

血統とかチャンピオンとか、関係あるの?と内心思っていました。

しかし、転職した次の職場では、子犬は全てブリーダーさんに直接足を運んで、きちんと確認して契約を結び、オークションから子犬を仕入れないお店でした。

オークションとは、子犬の競り市のことで、業者さんにあまりにも誘われるので、私もどんなものかと行って見たことがあります。

ベルトコンベヤーで段ボールに入った子犬が流れてきて、その子を段ボールから出すと競りが始まります。

私が見に行った日は1000頭くらいいました。

各お店の代表や、バイヤーがどんどん買い付けて、そこからそれぞれのペットショップに行きます。

ペットショップに常に子犬がいるのはそういう事なのです。

私が働いていた所は、チワワをきちんとブリーディングしているブリーダーさんの子を販売することが多かったのですが、そこで血統次第で同じチワワの犬種でも天と地との差があるということを知りました。

ブリーダーさんから、「血の入れ替えで、アメリカのチャンピオンのお父さんを迎えたから、今までの子達よりもコンパクトな体型になって、性格は強い子が多くなるかもー。」と連絡を受けた後に来た子犬たちは、本当に今までとは違う子犬たちが来るようになって、血によってこんなに変わるのか!!とビックリしました。

私はオーナーから口だけは一丁前だけど、子犬は売れない無能な店長と言われていました。

抱っこ商法とか、衝動買いとか、2か月の子犬を販売するって、私は普通では無いと思っていました。

出来れば生後4か月まで社会化を入れてからお客様にお渡ししていました。

オーナーからすると、売り時の生後2か月に販売しない高橋は何を考えているんだ。と思っていたはずです。

でも、こういうペットショップもあるんだ。と知ってもらいたかったし、この業界は変わらなければいけないとも感じていました。

そこのお店には、自称ブリーダーという方も買い物に来ていました。

うちの子犬たまには買ってよ。とそのブリーダーさんに言われても、本社で決めたブリーダーさん以外から子犬を入れるのは基本的に無理です。と断っていましたが、あまりにしつこいので、一度行って見ることにしました。

行った先は普通の住宅街の中にあり、え?こんなところでブリーディングしてるの?とビックリしました。

そして、家に入った瞬間に会話が出来ないくらいの犬の吠え声と、リビングに積み上げられたケージには犬・犬・犬。

あまりの出来事に声も出ませんでした。

キッチンには新聞紙が敷き詰められ、子犬が走り回っていました。

え?ここにこの人住んでるの??

どこで料理するの?

どこでご飯食べるの?

そう、ブリーダーだと思っていたその人は、最近はよく聞かれるようになりましたが、パピーミル(子犬生産工場)だったのです。

ショックを受ける私を前に、コーヒーどうぞと。

飲めるわけがないです。

どうしてこんなことになってしまったのかを聞くと、自分が生きていくためには、流行りの犬種をとにかく産ませないと利益が出ない。

流行りじゃないとペットオークションで買値を叩かれるから、とにかく数を増やして、たくさん産ませて売るしかないんだと。

他の仲間もみんなそうしていると。

吐き気がしました。

これは珍しいことではなく、繁殖屋はたくさんいます。

私はそういう人たちはブリーダーとは呼びたくないですし、呼びません。

私は、「こんな事はおかしい。保健所に通報します。」と言いました。

しかし、「保健所が来る前に事前にいついつ行くと連絡が来るから、その日だけ知り合いの家に移動させて、保健所が帰ったらまた元に戻せばいいだけだから通報しても意味ないよ。」と言われました。

なんじゃそら。

それまでの私は、なるべく業界の闇には触れない様にしてきましたが、初めて直面し、全国にこういうパピーミルがどれだけあるのかと思うとゾッとしました。

UGに転職し、UGの代表も利益は関係なく、全国のブリーダーに直接足を運び、ブリーダー紹介サービスをやっていました。

UGでも最初は子犬を陳列していましたが、中目黒の駅前という華やかな立地にあって、この塩対応の店長。

子犬はやはりじっくり育ててからお客様にお渡ししたいと思いますが、目黒川に桜が咲く時期は特にお客様が増え、お酒が入ったお客様から子犬を抱っこさせてくれとか、友達との待ち合わせの時間まで暇だから子犬を触らせてくださいとか言われ、当たり前の様にそれを断るとお客様と揉めることが多々あり、ある年から桜の時期はケージに子犬を置くのはやめよう。となりました。

そうなると、ぱっと見では子犬はいないので子犬を見に来るお客様は減りました。

そして、ケージから出してもらって、群れの中に入れた子犬は生き生きとしていました。

桜が散った後に、中目黒が元の状態に戻っても、子犬を陳列ケースに戻すことはもう出来ませんでした。

今は子犬が入っていたケージの扉は外され、入口付近でベッド置き場になっていますね。

それからは、子犬はUGのお客様か、紹介のみでしか販売しない様になりました。

そんな時、あるセミナーのパネラーとして私に声がかかりました。

セミナーのメインの方のブログを私はめちゃくちゃ読み込んでいて、是非お会いしたい!!と思った私は、二つ返事でOKを出しました。

セミナー前日に、主催者の方からセミナーを受講される方の名簿をいただきました。

あれ?

そこにはたくさんの愛護団体の方が・・・

ペットショップ店員の私が行ったらヤバくね!?

青ざめる私。

見事に予感は的中し、当日、セミナーが始まる前に「なんだこの高橋ってペットショップのやつかよ!誰が呼んだんだよ。」と聞こえる様に言われたり、パネラーの方に名刺を渡しながら、「今日はお願いします。」と挨拶をすれば、「子犬を販売してるんですか・・・今日は大丈夫ですか?」と言われ。

はい、知り合いの方は何名かいたものの、私は完全にアウェーでした。

主催者の方は恐らく、私をセミナーのスパイスとして投入したのです。

やってやろうじゃないか。

ペットショッパー高橋なめんじゃねえぞ。←  一体誰と戦っているのか

そのセミナーで私は吠えまくり、マイクを離さない勢いで話しまくりました。

「真面目にやってるペットショップの人間だっているんだよ!!」と叫び、「高橋くん、待て!!」と犬に待てをされるがごとく司会者の方に止められるイッちゃった目の私。

セミナーが終わり、調子に乗ってんなよという視線を投げかけてくる人ももちろんいましたが、私に興味を持ってくださる方や、あなたみたいなペットショップの人もいるんだね。頑張ってね。と励ましの言葉をかけてくださる方もいました。

そこで、ペットショップで子犬を販売しているだけで、ここまで厳しい目で見る方もいるのかと現実を知りました。

そこから、社会化お泊りを始め、仕事のメインがそちらに以降していくにつれ、子犬は販売するというよりも、今のこの業界が変わらないのであれば、困ったお客様と、理解されず、誤解されている子犬をおれが救いまくってやる!!と考えが変わっていきました。

なので、本当にきちんとブリーディングをしている見市さんに対する尊敬の念がありすぎて、本当に自分がモンアムールの子犬を飼っていいのか?という気持ちになってしまったのです。

クランバーアップケネルに一番最初にお邪魔した時、窓の向こうにはたくさんのテリアがいて、私が窓際に近づいたら絶対にみんな吠えるんだろうな。と思いました。

それが、吠えない。

ここでもう、度肝を抜かれました。

もうなんかレベルが違うなと。

前回の記事で、3時間悩んだと書きましたが、その中でたくさんお話しをさせていただきました。

前回の記事で載せたロイスのお父さんのUlysses(ウリッセ)

ODYSSEYのイタリア語読みだそうです。

見市さんに、ブリーディングとは何か?と言うことをお聞きしました。

質の良い繁殖は、血統と社会化が、すべてです。

そのためには、世界のトップクラスの犬を見極めて繁殖に取り入れていく必要があります。

気質、性質、飼いやすいという素質は血統が大きく左右すると思います。

繁殖における気質の改善と仔犬の時期の社会化、パピートレーニング。

これは家庭犬を生み出すブリーダーの責務だと思っています。

Ulyssesは、北イタリアからやって来ました。

でもUlyssesのお父さんのマックスはわたしが南フランスのブリーダーに譲りました。

だからUlyssesは、わたしの血統のよいところに、ヨーロッパの良い血液を組み合わせてできた子です。
・・・というUlyssesを今度は日本に連れて来て、ラニにブリーディングしました。

ラニのお父さんもまた、北イタリアから来た犬でした。

こうして、海外とのブリーダーと手を組み、計画繁殖をしながらより良い繁殖計画を積み重ねています。

とお返事をいただきました。

見市さんは、ジャックラッセルテリア、ボーダーテリアのために、世界中のショーに出てこれまでにジャックラッセルテリアで世界一を三度も獲っています。

なぜ、私がモンアムールのジャックラッセルテリアを飼いたいと思ったか?

それは、きちんとした計画的なブリーディングによって産まれる子犬は、性格も安定し、健康である可能性が高かったからです。

もちろん、生き物なので絶対はありません。

しかし、見市さんからお話しを聞くと、やはり病気はかなり少ないと感じました。

そんな時に出会った強い目を持ったロイス。

ボルドーが亡くなって、弱っている自分の心に火を点けてくれ、私を奮い立たせてくれるであろう素晴らしい子犬。

私はこれからロイスを通して、情報を発信をしていきたいと思っています。

今までは、言いたいことがあっても、おめーもコーギーのジャックをペットショップから飼ってんじゃん。と言われたら終わりでした。

でも、これからはペットショップで子犬を飼うことが全てではないと発信したいのです。

ペットショップでの生態販売は余程のことが無い限り、無くなることはありません。

大きな力が働いており、利権が絡んでいます。

簡単に販売するペットショップと、簡単に子犬を買ってしまう人。

その後に起こるこんなはずでは無かったという、人も犬も幸せにならない悲しい結末をどうにかしていきたいのです。

そして、ブリーダーと繁殖屋、パピーミルは全く違うと言っておきます。

なぜ常にペットショップにあれだけの頭数の子犬がいるのか?

その背景にはペットオークションがあり、またその背景には、散歩はおろか、ケージから出してもらうことも出来ず、発情がきたらまだ小さく若い子でも交配して、そこからは半年に一度、発情がくるたびに交配させられ、7、8歳のシニアになるまでひたすら子犬を産ませられる現実があるのです。

見市さんのモンアムールでは、成熟する2歳までは交配せず、一年に一度の交配で、5歳以降はブリーディングはしないそうです。

私がミックス犬に常に危機感を抱いているのも、繁殖しているのはブリーダーではないからです。

純血種は、世界中に何百種類といて、その全ての犬種にその犬種になった歴史があり、理由があります。

ブリーダーはその犬種を愛し、ブリーディングに誇りを持っています。

カウンセリングで言います。

柴犬はトイプードルにはなれない、チワワもトイプードルにはなれない、大人しいお人形さんみたいなトイプードルばかりではないですよと。

子犬を飼うのであれば、飼う側も犬種の事をもっと勉強するべきです。

今のミックス犬は流行っているからと作り出されています。

ペットショップの店員さんは言います。

世界で一頭のワンちゃんですよ。と。

いやいやいや、うちのロイスもジャックもボルドーも世界で一頭の最高の犬ですけど?

どの子も世界に一頭しかいません。

耳障りの良いことを言って、ファッションみたいに子犬を売らないでくれと思います。

日本人は真面目です。

知らないだけで、やれば出来る、変わっていけると私は信じています。

私の理想は、ペットショップでの生体販売が無くなって、子犬はブリーダーから迎えるようになればいいなと。

子犬の値段も、もっと高くていいと思います。

衝動買いなんて出来ないくらいの値段にすればいいと思ってます。

命に値段をつけるな!!とよく言われますが、そこまでかかった手間と経費を払うと考えることは出来ないでしょうか?

高くなれば、人は慎重になり、現実的に考えるようになると思います。

100万以上の車をその場で衝動買いする人はほとんどいないでしょう。

小型犬であれば10年以上の付き合いになります。

私はロイスの金額を聞いた時にビックリしました。

これだけやってその価格なんですか?と。

それでも、周りにブリーダーから直接子犬を迎えるってどんなイメージ?と聞くと、ペットショップに卸さないから安く買えるイメージ。という答えが多くてビックリしました。

見市さんも、みんなが高橋くんみたいな考えではないんですよ。と仰いました。

もっともっと子犬の価値が上がるといいのにな。

いつもと違う感じになってしまいましたが、これらが私が体験し、今、思っていることです。

子犬を飼った人、皆様が幸せになりますように。

最初から手放すつもりで子犬を飼う人はいません。

もう少し、この業界がレベルアップしていかないといけないと思います。

子犬は命あるものなのですから。