心臓に優しいドッグフードの選び方

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犬の心疾患は死亡原因の上位を占めますが、心臓の機能が衰えてきたわんちゃんにとってどのようなフードを選べばよいのか、その指針について解説します。病気の治癒を目的としたものではございませんので、その点ご留意下さい。

心臓の機能

心臓は、血液をポンプのように循環させる原動力となる器官です。心臓を動かす筋肉は心筋と呼ばれ、損傷した心筋の修復は一般的な細胞と比べて難しいとされています。

心疾患に気をつける犬種

一部の犬種は、先天的に心疾患になりやすいことが知られています。下記犬種の場合にはより注意が必要です。

心疾患になりやすいとされる犬種
プードル、ポメラニアン、ヨーキー、マルチーズ、シー・ズー、キャバリア(特に注意が必要)

心機能が衰えたワンちゃんに推奨されるドッグフード

高ナトリウムを避ける

高ナトリウムのドッグフードは避けるべきですが、心臓の状態が低中度で一般的な総合栄養食のみを給与している場合には、ナトリウムの摂取量について気にする必要はほぼありません。AAFCOの定めるナトリウム量は下限のみの設定ではありますが、通常0.5%以下のものが大半です。その量であれば、犬は人と比べてナトリウムの排出能力が高いとされているので、他の臓器(特にナトリウム排出機能を持つ腎臓)に問題ない限りはドッグフードに含まれるナトリウムの摂取により、心臓の状態が悪化することはまず無いでしょう。

人の食事やおやつを与えている場合には、そのおやつなどに含まれる塩分が心臓に影響を与える場合がありますので、注意が必要です。

心臓の機能の衰えが重度の場合には、通常の総合栄養食のナトリウム量でも問題が発生する場合があります。その場合には低ナトリウムのドッグフードが推奨されます。個人的な目安としては、0.15%以下を推奨します。

また、心臓の機能の衰えている場合には同時に腎臓の状態も悪いケースが多く、その場合にはリンの制限も合わせて必要となります。

ご参考までに、ロイヤルカナン社及びヒルズ社等の療法食に含まれるドライタイプのドッグフードのナトリウム含有率を一覧にしました。(2018年3月現在)

製品名 100gあたりのナトリウム含有率
ロイヤルカナン 心臓サポート1+関節サポート ドライ 0.34%
ロイヤルカナン 心臓サポート2 ドライ 0.13%
プリスクリプション・ダイエット h/d ドライ 0.12%以下
ドクターズケア 犬用 ハートケア ドライ 0.25%以下

タウリンを摂取する

タウリンは、心臓や筋肉に多く含まれる成分で、タウリンの不足が犬の拡張型心筋症や僧帽弁閉鎖不全症と関係があるという論文も発表されています。犬は体内で合成することも可能ですが、一部の犬種で体内で十分に合成できない可能性が指摘されているため、直接タウリンを摂取することが望ましいでしょう。

また、ドッグフードに含まれているタウリンでは、添加されているものでも不足が生じる場合があり、より心臓に配慮をしたい場合には、別途サプリメントでのタウリン摂取が推奨されます。日本の医薬品としてのタウリン(合成タウリン)は1日3gが目安となっているため、犬で考えると体重5kgで少なくとも1日300mg程度は、安全に摂取できるでしょう。タウリンは比較的安全性が高く、毒性は低いと考えられています。

拡張型心筋症では、犬種に応じて500~2000mgのタウリンを1日2~3回投与することを推奨する研究結果もあります。この場合、通常の総合栄養食に含まれるタウリンでこの量を満たすことはほぼ不可能で、サプリメントでの添加が必要となります。

心臓以外の臓器が健康な場合には、タウリンを多く含む動物タンパク質を摂取することで、天然タウリンを体内に取り込むことが出来ますが、タウリンの含有量多いとされるハツ(生の豚ハツで100gあたり100mg程度)でも0.1%となっており、一般的な食品から十分な量のタウリンを摂取することは極めて難しいでしょう。

ナトリウムと同様に、ロイヤルカナン社及びヒルズ社等の療法食に含まれるドライタイプのドッグフードのタウリン含有率を一覧にしました。(2018年3月現在)

製品名 100gあたりのタウリン含有量
ロイヤルカナン 心臓サポート1+関節サポート ドライ 0.36g
ロイヤルカナン 心臓サポート2 ドライ 0.33g
プリスクリプション・ダイエット h/d ドライ 0.10%以上
ドクターズケア 犬用 ハートケア ドライ 0.30%

体重管理

肥満は心臓に大きな負担をかけ、心臓にダメージを与えます。ドッグフード自体のカロリーの確認や給与量の調整を行い、肥満にならないように心がけましょう。

運動はカロリーを消費し肥満になりにくくしますが、心臓の機能が衰え始めている場合に無理に行うと逆に心臓に負担をかけることに繋がります。また、運動だけで肥満を防ぐことは難しく、フード選択と給与量の調整によって、肥満を防ぐ必要があります。

まとめ

心臓への配慮を考えるのであれば、肥満になりにくい最適なカロリーの総合栄養食が望ましく、タウリンが添加されているとなお良いでしょう。

重度の場合には、心臓への負荷を抑えるために、総合栄養食の中でも低ナトリウムのドッグフードへの変更が推奨されます。また、心臓が衰えている場合には、他の臓器も衰えている場合が多く、その場合にはそれぞれの臓器に負担のかけないタイプのドッグフードを選ぶ必要があります。選び方に迷われた場合には、お気軽にお問い合わせ下さい。

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この記事の筆者

吉武 雄史UGpet Inc. 代表取締役社長

小学校の卒業文集に「ペットショップの店長になりたい」と夢を記し、20歳となり1年間アルバイトをして貯めた資金を元手として、明治大学在学中にUGペットを創業。現代表取締役社長を務める。愛犬はトイ・プードルのくるみとミニチュアダックスフントのビビ。ZENペットフードの開発者です。

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