犬はフードに含まれている炭水化物を消化できないのか?

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犬は炭水化物を消化することができないので、ドッグフードに炭水化物は不要といわれることがありますが、犬は本当に炭水化物を消化できないのでしょうか?

結論

結論から先に言うと、犬はドッグフードに含まれている炭水化物のほとんどを消化することできます。

ほとんどと書いたのは、炭水化物の一種である多糖類の中にあるセルロースなどは消化できないためです。しかし、セルロースは定義上炭水化物に分類されますが、繊維質の一種でもあります。

多くの場合問題視されているのは、フードに含まれる炭水化物の主要構成成分である「デンプン」ですが、デンプンはそのままの状態であれば消化率が低いことは事実です。しかし、フードに含まれているデンプンは全て調理されたものであるため、生のデンプンを食べる機会は日常においてほとんどありません。

デンプンは、アミロースとアミロペクチンが結合されており、人であれば「アミラーゼ」が含まれる唾液により結合が不規則に切断され分解されますが、犬の唾液には「アミラーゼ」が殆ど含まれていません。しかし、ドライフードに含まれているデンプンは製造過程で加えられる熱によりアルファ化(糊化)されているので吸収が容易となります。アルファ化したデンプンは、そのまま冷めてしまうと消化し辛いデンプンに戻りますが、温度が下がらないうちに水分を抜くとアルファ化したままとなります。ウェットについても製造過程で水で加熱調理されるため、アルファ化されます。

2013年に英科学誌ネイチャーは発表した論文(The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet.)によると、犬は狼より効率的にデンプンを消化できる能力を持っていると発表しています。犬と狼は遺伝子レベルでほとんど同じと言われていますが、消化吸収能力において明確な違いがあると考えられています。狼と消化能力の違いが明確にある以上、遺伝子がほとんど同じという理由を挙げて犬にとって狼と同じ食事が一番よいというのは誤りと考えるのが妥当でしょう。

炭水化物の役割

炭水化物のうちでんぷんの大半は体内でブドウ糖に変換され即効性のエネルギー源となります。セルロースなどの食物繊維の一部は消化はされないものの、腸内環境をサポートする働きがあります。

炭水化物の消化率

デンプンは小腸で消化され分解されます。いくつかの研究結果では、とうもろこし、大麦、米、エン麦を30~57%含んだドライフードを与えた犬の消化率を調べた結果、摂取したデンプンのほぼ100%が小腸で吸収がされていたことが報告されています。

1999年に発表された論文(Evaluation of selected high-starch flours as ingredients in canine diets.)においても、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、米、ソルガムを含むフードのでん粉成分はほぼ(99%以上)消化されていたことが報告されています。

じゃがいもには、人や犬にとって消化が難しい「難消化性デンプン」が含まれており、加熱直後は消化率が高いデンプンとなりますが、冷めたり乾燥されたりすると消化率が低下します。この「難消化性デンプン」は、消化がされにくいのですが、食物繊維と同じような働きをし、善玉菌の餌となり健康な腸内環境の維持をサポートします。

炭水化物と食物アレルギー

炭水化物が食物アレルギーの原因になるケースがあります。犬においては小麦に反応を起こすケースが多いとされています。

炭水化物と疾患

一部の疾患を持つ犬にとって、炭水化物を与えることが問題となり得るケースがあります。

ガン

ガンはブドウ糖をエネルギーとして増殖すると考えられているため、ガンを患っている場合には炭水化物の多いフードではなく、出来る限り脂肪からエネルギーを確保することが推奨されています。

炭水化物の要求量

AAFCOでは炭水化物の必要要求量は定められていませんが、高エネルギーが必要とされるステージでは適切な炭水化物摂取が必要とされるため、成長期(子犬)には20%以上の炭水化物が含まれるべきだと考えられています。また、エネルギー消費量が高くなる妊娠期や泌乳期の雌犬には最低で23%の炭水化物が推奨されており、デンプンが過剰でも問題はないとされています。

炭水化物は必要?不必要?

私は炭水化物は適量ある分について必要だと考えています。糖が不足していた場合には肝臓で脂肪から糖にかわり(糖新生)エネルギー源となりますが、あえて肝臓の機能で変換せずとも必要なエネルギーを炭水化物から賄えばいいと考えるからです。

また、ビフィズス菌や乳酸菌といった良好な腸内フローラを形成する腸内細菌の一部は、小腸で消化吸収されなかった炭水化物をエサにしています。良好な腸内フローラを維持するためにも炭水化物の摂取が必要だと考えます。

また、専門知識がなくても犬に必要な栄養素を摂取することが出来、かつ保存性能の高いドライフードは、固形状に成型する上で炭水化物を必要とします。

特定の疾患など特殊な事情を除いて、高炭水化物にする健康面でのメリットはないと思われます。0か100の必要不必要論ではなく、タンパク質、脂肪、炭水化物それぞれのバランスが重要なのではないかと考えています。

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この記事の筆者

吉武 雄史UGpet Inc. 代表取締役社長

小学校の卒業文集に「ペットショップの店長になりたい」と夢を記し、20歳となり1年間アルバイトをして貯めた資金を元手として、明治大学在学中にUGペットを創業。現代表取締役社長を務める。愛犬はトイ・プードルのくるみとミニチュアダックスフントのビビ。ZENペットフードの開発者です。

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